2006年の夏。
当時は主流だったブラウン菅ほどの大きさのパソコン画面に向かい、毎日ため息をついては、
あー、何か楽しいこと無いかな〜
そう呟いては、前のデスクに座る会社で仲の良かったケイコに、
あはは、マツコなら若いんだしこれから何にだってなれるよ。あんたほんとなんでも器用だし真面目だしさ。
わたしの当時のあだ名といえば、マツコ。
ただ名前の一番前と後ろをくっ付けたあだ名であった。
歳は7つ上の先輩であったけど、仕事はもちろんのことプライベートでもその頃はケイコとずっと一緒でした。昔から自分よりうんと歳上の人の側にいることが好きで、その理由は自分もその人と同じ年齢のようになれる気がしたから。ひたすら、大人の女に憧れていた。
少しだけ彼女のことを紹介しておくと、
東京生まれで容姿端麗、スタイル抜群、歩くヴォーグのようなコンサバ系女子。文学と映画を愛し学習院大学卒。それなのに中身はドが付くほどのお人好しで気弱で可愛い人でした。
私はそんな彼女が行く場所に誘われれば、どんな所でも足を運んだ。2人とも服や音楽が好きだったのでよくショッピングにも行った。
そんなある日のこと、
ケイコがベリーダンスなる稽古事を大学の友人達とはじめたらしい。
聞いてみれば、仲良い大学の友人の結婚式の出し物としてベリーダンスをこれまた大学の先輩に教わって結婚式の二次会で踊るとのこと。
へー。
わたしの返事はこうだった。
本当の心情としては、私は一人っ子なので会社でやっと出来た友人という以上に、彼女をお姉ちゃんのように慕っていたので、彼女と遊べる時間が少なくなっちゃうかもな、、と少し心が痛くなった。
そこから1ヶ月もたたないうちに、
ケイコは激変していった。
何がって、容姿から。笑
ケイコらしいのだけど、まずは形から入ったらしい。高いハイヒールではなくサンダル、コットン素材のロングのフレアスカート、エキゾチックなキャミソールにモロッコバッグ。
明らかに影響されまくってるこの人!!笑
熱しやすく冷めやすいタイプの彼女が割と本気でやってる稽古事に変わっていった。
わたしは横目で相当楽しいんだろうな、、と思いつつも更に不安が募っていった。
2人でお昼ご飯に出た時のこと。
ねぇ、マツコさ、今度わたしが習ってる先生もでるベリーダンスのショーが六本木であるんだけど一緒に観に行こうよ!
即答での行く!
であった。ベリーダンスがどう、ではなく
彼女がやっと自分のベリーダンスの領域に入ってみる?と言ってくれたのだ。
わたしは必死に実は興味あったとか観に行きたいありったけの理由を述べ、ケイコとみにいく約束を取り付けた。
やったー!
という反面。デスクに座ってふと思った。
つーか、ベリーダンスて、、何?
Very dance...?とってもすごいダンス?
あ、リンボーダンスか!
その後の昼休み終わりの数時間はgoogleとwikiを反復した。
とりあえず、ネットサーフィンを駆使して得た情報は、、
なんか腹出すダンスらしい。中東の方のダンスらしい。
くらいであった。我ながら今思うと、リサーチが酷すぎる。
次の週、例のショーの日がやってきた。
新宿がホームのわたしは、六本木なんて滅多に行かない場所であった。当時はまだ建設したての六本木ヒルズの近くにあるスーパーデラックスというハコであった。
会場に入ると異様な空気だった。
暗い会場にステージらしくものがなく、会場のど真ん中にはキャンドルが天の川のように敷き詰められていた。
その周りには年齢的にはわたしよりかなり上の世代、ケイコやケイコよりも上の世代の女性たちが目をキラキラとさせてショーが始まるのを待っているようだった。
高校の頃に少しバンドをやっていた私はライブ会場のようなものをイメージしていたのだけど、そこは全くの別空間だった。
しなやかで上品な空気が流れていた。エキゾチックでいい香りもした。
年上の女性に憧れ、サブカル好きな私の心をかなりその時点で鷲掴みにされていたと今振り返ると思う。
提示されていたショー開始時刻から少し遅れて、会場はさらに暗くなりそのショーは始まった。
次回へ続く
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